Q施 7. 高力ボルトの締付け施工法の確認方法。

 JASS 6によれば、
「高力ボルト締付け工程開始時に工事で採用する締付け施工法に関する確認作業を行う。この作業は、工事用に受け入れた高力ボルトと締付け作業に使用する締付け機を用いて、実際に工事に適用する締付け手順で行う。以下に締付け施工法の確認時の具体的手順を示す。
(1) 当該工事に適用する締付け機器を選定して適切に調整されていることを確認する。
(2) 当該工事の接合部から代表的な箇所を複数選定し、下記に示す要領で締付けを行う。
a. トルシア形高力ボルトの締付け
ⅰ) 高力ボルトに異常のないことを確認のうえ、ナット下に座金1個敷き、ナットを回転させて行う。
ⅱ) セットを構成する座金およびナットには裏表があるので、ボルトを接合部に組み込むときには、逆使いしないようにする。[施工編Q11図1参照]
ⅲ) 締付け作業は、部材の密着に注意した締付け手順で[施工編Q34図4参照]、1次締め、マーキングおよび本締めの3段階で行う。
ⅳ) 高力ボルトの締付けに用いる機器のうち、トルクレンチは±3%の誤差内の精度が得られるように充分整備されたものを用いる。
ⅴ) 毎日の締付け作業に際しては、作業点検としていずれかの接合部において締付け状況を確認する。
b. 高力六角ボルトの締付け
ⅰ) 高力ボルトに異常のないことを確認のうえ、ボルト頭下およびナット下に座金1個ずつ敷き、ナットを回転させて行う。
ⅱ) セットを構成する座金およびナットには裏表があるので、ボルトを接合部に組み込むときには、逆使いしないようにする。[施工編Q11図2参照]
ⅲ) 高力ボルトの締付け作業は、部材の密着に注意した締付け手順で行い[施工編Q34図4参照]、表1に示す標準ボルト張力(軸力)が得られるように、1次締め、マーキングおよび本締めの3段階で行う。締付けは、ナット回転法またはトルクコントロール法により行う。

 
表1 標準ボルト張力(軸力)             

                           (単位:kN) 


ⅳ) 高力ボルトの締付けに用いる機器のうち、トルクレンチは±3%の誤差内の精度が得られるように充分整備されたものを用いる。
ⅴ) 毎日の締付け作業に際しては、始業点検としていずれかの接合部において締付け状況を確認する。
(3) それぞれの継手部に対し、JASS6「締付け後の検査」に示す要領で検査を行い、いずれも合格することを確認する。
(4) 一部の接合部もしくは高力ボルトに不合格の箇所がある場合は、原因を究明し、対策を講じたうえで再度確認を行う。
(5) トルクコントロール法による場合には、上記手順に先立って標準ボルト張力(軸力)を導入するための適切な締付けトルクを設定しておく。設定の手順は下記による。
ⅰ) ボルト呼び径ごとにトルク係数値がほぼ同じロットをまとめて1施工ロットとする。その中から選んだ代表ロットのボルトに関する社内検査成績書に記載されたトルク係数値kに基づいて締付けトルクTを定める。
 [T=k・d・N、ここでd:ボルト呼び径、N:標準ボルト張力(軸力)]
ⅱ) 上記の締付けトルクをベースに、軸力計を用いて導入張力(軸力)の平均値が標準ボルト張力(軸力)の±10%以内になるように締付け機器のキャリブレーションを行う。
ⅲ) 調整された締付け機器を用いて代表ロットから選んだ5セットのボルトについて軸力計を締付けて、導入張力(軸力)の平均値が表2の範囲に入っており、かつ個々の測定値が平均値の±15%以内にあることを確認する。
ⅳ) 上記5セットのボルトの追締めトルクを測定し、その平均値を締付け後の検査の基準として設定する。


表2
常温時における高力六角ボルトの導入張力(軸力)の平均値の範囲


                            (単位:kN)