Q設 5. 高力ボルトと溶接との併用継手について。
許容耐力の考え方
高力ボルト接合設計施工ガイドブックによれば、
「高力ボルトの摩擦接合と隅肉溶接とを1つの継手に併用する場合、「鋼構造設計規準」では、高力ボルトの締付けを溶接に先立って行うならば、接合部の降伏(許容)耐力として両者の降伏(許容)耐力を加算できるとしている。これは主すべりを生じる以前の高力ボルト接合部の剛性と隅肉溶接の剛性が近いため累加が可能となるからであり、この点は実験的にも確かめられている。
この種の併用継手の最大耐力は、高力ボルトのすべり耐力と溶接部の最大耐力の和として計算する。これは一般的に用いられる高力ボルト接合と隅肉溶接の各接合要素耐力のバランスの範囲では、併用継手全体としての挙動を支配するのは隅肉溶接であり、隅肉溶接部全体の最大耐力時の変位量が高力ボルト接合部のすべり耐力時の変化量に対応するためである。」とされています。
なおフランジを溶接、ウェブを高力ボルト摩擦接合とするような継手は混用継手であり、併用継手とは異なるものです。
施工順序
高力ボルト接合設計施工ガイドブックによれば、
「施工順序については、先に溶接を行うと元ひずみのある板を使ったり、溶接熱によって板が曲がったりしたときに、後から高力ボルトで締付けても、接合面が密着しなかったり、十分な接触圧が得られないことが起こる可能性があるので、比較的板厚の小さい部材の多い建築構造物では、先に高力ボルトを締付ける場合のみについて累加を認めている。しかし、上記のような可能性が全く考えられない場合には、順序は関係なくなるし、また、溶接による収縮変形や熱の影響を受けないように、高力ボルトの締付けを後にしたほうが良い場合も考えられる。従って、接合部の条件によっては、実験などにより施工順序、併用効果について検討することが望ましい。」とされています。