Q施 11. 座金、ナットを逆使いした場合、張力(軸力)はどのようになるか。
ナット、座金を逆使いすると、トルク係数値が不安定となり、共まわりが発生し、本来の張力(軸力)が得られない場合があります。従って、ナット、座金は正しい向きに取付けて使用して下さい。
すなわち、ナットは等級マークが外側になるように、座金は内径面取りがない側を締付け部材側になるよう正しく使用して下さい。
ナット、座金を逆使いすると、トルク係数値が不安定となり、共まわりが発生し、本来の張力(軸力)が得られない場合があります。従って、ナット、座金は正しい向きに取付けて使用して下さい。
すなわち、ナットは等級マークが外側になるように、座金は内径面取りがない側を締付け部材側になるよう正しく使用して下さい。
共まわりとはナットと座金が一緒に回る現象、軸まわりとはボルト軸が回転して締付けられる現象のことをいいます。
共まわりが生じると、トルクコントロール法による締付けでは、トルク係数値が不安定となり、適正な張力(軸力)が得られない可能性があります。
トルシア形高力ボルト等のようにトルクコントロール法による締付けの場合、共まわり並びに軸まわりが生じていることが確認された場合には正しい締付けが行われていないと判断してその高力ボルトは新しいものに取り替えるよう規定されています。
トルシア形高カボルトのピンテールを溶断するとボルト材料が熱影響を受けて機械的性質が低下します。
従って、ピンテールの溶断作業は実施しないで下さい。
高力ボルトの材料は熱影響を受けると機械的性質が低下する恐れがあり、その限度が250℃前後とされています。
一方、鉄骨工事技術指針・工事現場施工編「現場混用接合部の施工順序」においては、混用継手では高力ボルトを先に締め付けることを原則としながらも「高力ボルトを締め付けた後、梁フランジの完全溶け込み溶接を行うと溶接部に近いボルトが加熱されボルト張力(軸力)が低下する」という研究例を紹介しています。また、最外縁ボルトの表面温度は70~130℃に達し、ボルト張力(軸力)の低下はおおむね0~20%の範囲であった、とも報告されており、250℃より低い温度でも張力への影響が確認されています。そこで、梁ウェブ摩擦接合部のすべり耐力には余裕を持たせること、場合によっては、1次締め⇒本溶接⇒本締めなどの施工手順も検討することなども提案されています。いずれにしろ、これからの研究はまだ数も限られており、また溶接による入熱管理やルートギャップの問題なども影響してくるため、高力ボルトと溶接部との距離は一概に決められず設計監理者、施工者との十分な打合わせが必要です。
トルシア形高力ボルト締付け終了後の検査にあたっては、各接合部の全てのボルトについてピンテールが破断していることを確認するとともに、1次締付け後に付したマークのずれによって、共まわり・軸まわりの有無、ナット回転量などを目視検査し、いずれについても異状の認められないものを合格とします。
この時、ナットの回転量は1次締めの大きさやボルトの首下長さなどの条件の違いにより様々な角度となり得る為、ナット回転量の許容範囲は決められていません。
しかし、適正な締付けが行われている場合には、同一群のボルトについては同程度の回転量を示すべき性質のものであることから、ナット回転量が群の平均回転量に対して±30°の範囲内にあるボルトを合格としています。
高力ボルトの保管・取扱いについての最低必要条件は次の通りです。
(1) 雨水、夜露による濡れ、錆の発生、ほこりや砂などの付着が防止できること。
(2) 温度変化の少ない場所に保管すること。
(3) 箱の強度を考慮し、積み上げる段数は4~5段以下とすること。
(4) 乱暴な扱いは避け、ねじ山・ピンテール部等を損傷しないようにすること。
接合部の設計とも関連することですが、その食違いの量が2㎜以下であれば、リーマがけによって、ボルト孔を修正してもよいとされています。この場合、リーマの径は、使用ボルトの公称軸径+1.0㎜以下のものを用います。
なお、ボルト孔の食違いが2㎜を超える場合は、ボルト孔を修正すると断面欠損が大きくなりすぎるのでスプライスプレートを取り替えるなどの措置が必要です。
JASS6によれば、
「ボルト挿入から本締めまでの作業は、同日中に完了させることを原則とする。」とされています。
(1) 試験に用いた機器の精度及び試験方法の再検討を行います。
a. 軸力計の検定を最近実施したか。
b. 軸力計のプレートやブッシュは、ボルト径、ボルト長さにあった適正なものを使用しているか。
c. ボルト及び座金の共まわりがないか。
(2) 引続いて、倍数試験を実施する。
(3) 倍数試験でも不合格の時は、ボルトメーカーに連絡し処置対策を協議する。
トルシア形高力ボルトの現場検査は、検査ロットから5セットの導入張力(軸力)を測定し、ばらつき(標準偏差)は判定の対象に入っていません。これは、抜取り数n=5の張力(軸力)試験データから算出した標準偏差は、母集団の標準偏差に対して誤差が大きすぎるため、正しい合否の判定が下せないためです。
なお、標準偏差は、工程が安定状態にある製造メーカーにおいては、提検ロットのデータを含む最近の管理図を用いて保証されています。