Q施 1. 高力ボルトの余長の許容範囲。
余長は、ナット面から突き出た長さが、ねじ1山~6山の範囲にあるものを合格とします。(JASS 6)この場合の1山とは1ピッチ相当の長さと捉えて下さい。
また、道路橋示方書・同解説では、ボルトの平先部(又は丸先部)が締付け完了後に少なくともナットの面より外側にあること、となっています。
余長は、ナット面から突き出た長さが、ねじ1山~6山の範囲にあるものを合格とします。(JASS 6)この場合の1山とは1ピッチ相当の長さと捉えて下さい。
また、道路橋示方書・同解説では、ボルトの平先部(又は丸先部)が締付け完了後に少なくともナットの面より外側にあること、となっています。
降雨の際は、締付け作業を行わないで下さい。
挿入済みのボルトは、速やかに1次締めを行い、ねじ部への雨水の浸入を防止するとともに、もし可能であれば直ちに本締めを完了させてください。降雨により締め付けができないときは、シート等を用いて継手部の水濡れ防止の処置を行って下さい。
鉄骨工事技術指針・工事現場施工編によれば、
「本締め用の高力ボルトを仮ボルトに兼用すると、本締めまでの期間にナット潤滑処理面やねじ山が湿気などで変質する危険性が高いので、建て方当日に本締め作業が終了できるなど特別な場合を除き兼用してはならない。」とされています。
高力ボルトの施工手順において、1次締めを終えた後、すべてのボルトについてボルト・ナット・座金から部材表面にわたる一直線のマークを施す必要があります。このマークは、締め忘れの有無の確認だけでなく、ナットの回転量、共回りの有無の確認にも利用されます。
マーキングは、ボルト締付け管理上重要な意味をもっており、マーキングされずに施工されたボルトは施工不良と判定されます。
鉄骨工事技術指針・工事現場施工編によれば
「トルシア形高力ボルトの場合には締付け後に追締めトルクを判定して締付け力の適否を判断しようとすることは無意味である。それは、このボルトのピンテール破断トルクが締付けトルクと等しくなる機構のボルトであるため破断トルクは安定しており、すべての追締めトルクもこれが再現されるだけのことである。」とされています。
高力六角ボルトをトルクコントロール法で締付けた場合は、トルクチェックにより測定されたトルクが、締付け施工時のキャリブレーションの際に得られた平均トルクの±10%の値以内におさまっているものは、締付け作業が正しく行われていると判断してよいとされています。
JASS 6によれば、
「高力ボルト締付け工程開始時に工事で採用する締付け施工法に関する確認作業を行う。この作業は、工事用に受け入れた高力ボルトと締付け作業に使用する締付け機を用いて、実際に工事に適用する締付け手順で行う。以下に締付け施工法の確認時の具体的手順を示す。
(1) 当該工事に適用する締付け機器を選定して適切に調整されていることを確認する。
(2) 当該工事の接合部から代表的な箇所を複数選定し、下記に示す要領で締付けを行う。
a. トルシア形高力ボルトの締付け
ⅰ) 高力ボルトに異常のないことを確認のうえ、ナット下に座金1個敷き、ナットを回転させて行う。
ⅱ) セットを構成する座金およびナットには裏表があるので、ボルトを接合部に組み込むときには、逆使いしないようにする。[施工編Q11図1参照]
ⅲ) 締付け作業は、部材の密着に注意した締付け手順で[施工編Q34図4参照]、1次締め、マーキングおよび本締めの3段階で行う。
ⅳ) 高力ボルトの締付けに用いる機器のうち、トルクレンチは±3%の誤差内の精度が得られるように充分整備されたものを用いる。
ⅴ) 毎日の締付け作業に際しては、作業点検としていずれかの接合部において締付け状況を確認する。
b. 高力六角ボルトの締付け
ⅰ) 高力ボルトに異常のないことを確認のうえ、ボルト頭下およびナット下に座金1個ずつ敷き、ナットを回転させて行う。
ⅱ) セットを構成する座金およびナットには裏表があるので、ボルトを接合部に組み込むときには、逆使いしないようにする。[施工編Q11図2参照]
ⅲ) 高力ボルトの締付け作業は、部材の密着に注意した締付け手順で行い[施工編Q34図4参照]、表1に示す標準ボルト張力(軸力)が得られるように、1次締め、マーキングおよび本締めの3段階で行う。締付けは、ナット回転法またはトルクコントロール法により行う。
表1 標準ボルト張力(軸力)
(単位:kN)
ⅳ) 高力ボルトの締付けに用いる機器のうち、トルクレンチは±3%の誤差内の精度が得られるように充分整備されたものを用いる。
ⅴ) 毎日の締付け作業に際しては、始業点検としていずれかの接合部において締付け状況を確認する。
(3) それぞれの継手部に対し、JASS6「締付け後の検査」に示す要領で検査を行い、いずれも合格することを確認する。
(4) 一部の接合部もしくは高力ボルトに不合格の箇所がある場合は、原因を究明し、対策を講じたうえで再度確認を行う。
(5) トルクコントロール法による場合には、上記手順に先立って標準ボルト張力(軸力)を導入するための適切な締付けトルクを設定しておく。設定の手順は下記による。
ⅰ) ボルト呼び径ごとにトルク係数値がほぼ同じロットをまとめて1施工ロットとする。その中から選んだ代表ロットのボルトに関する社内検査成績書に記載されたトルク係数値kに基づいて締付けトルクTを定める。
[T=k・d・N、ここでd:ボルト呼び径、N:標準ボルト張力(軸力)]
ⅱ) 上記の締付けトルクをベースに、軸力計を用いて導入張力(軸力)の平均値が標準ボルト張力(軸力)の±10%以内になるように締付け機器のキャリブレーションを行う。
ⅲ) 調整された締付け機器を用いて代表ロットから選んだ5セットのボルトについて軸力計を締付けて、導入張力(軸力)の平均値が表2の範囲に入っており、かつ個々の測定値が平均値の±15%以内にあることを確認する。
ⅳ) 上記5セットのボルトの追締めトルクを測定し、その平均値を締付け後の検査の基準として設定する。
表2
常温時における高力六角ボルトの導入張力(軸力)の平均値の範囲
(単位:kN)
2007年に改訂された建築工事標準仕様書JASS6鉄骨工事において、通常は省略してよい試験として位置づけられている導入張力確認試験、いわゆる現場受入検査(通称:現場キャリブ)ですが、施主、設計監理者、施工者の判断により実施する場合がありますので、工事着手前に十分な確認が必要です。
鉄骨工事技術指針・工事現場施工編「トルシア形高力ボルトの導入張力試験」によれば、
「ボルトメーカーごとに呼び径ごとに全納入ロットを1施工ロットとして、その全ロットの中から1ロットを抽出する」とされています。ボルトセットの品質は製造ロットごとの社内検査によって管理されており、輸送、保管後の品質を確認するため、呼び径ごとに代表1ロットを検査すれば十分とされています。
鉄骨工事技術指針・工事現場施工編「軸力計を用いる際の留意事項」に示されている通り、現場受入検査に用いることのできる軸力計は限定されており、呼び径ごとに掛かるサイズが決まってしまいます。工事で使用するボルト首下長さがこの範囲にない場合には、ボルト発注の際に検査用ボルトを同時に発注し、これらのボルトを用いることになります。
表3に各呼び径ごとの適合サイズを記します。
なお、M27・M30に関しましては、使用軸力計の構造により違ってきますのでボルトメーカーへお問い合わせ下さい。
表3 現場受入検査に適正な首下長さ (mm)
( )はなるべく使用しない。
また油圧軸力計の目盛板は5Kn単位で記されていますが、読み方に関しては1kN単位で読み取って下さい。(理由は下記の通り)
また、5本(または倍数試験の場合の10本)の平均値は四捨五入して整数に丸めて下さい。
理由 :軸力規格値は1kN単位で規定されており、測定値を5kN刻みで読むと誤差が大きくなる。
アナログ機器の場合、最少目盛の1/10まで読み取ることが一般的だが、規格値、軸力計の感度、指針の太さ等考え合わせた場合、1kN単位で読み取れば充分である。