Q施 21. 降雨等で濡れたボルトはどうするか。 乾燥すればよいのか。
降雨、降雪などにより、水濡れ状態となったボルトは、トルク係数値が変化して、適正な締付け張力(軸力)が得られない恐れがあり、そのまま使用しないで下さい。
水濡れ後に乾燥した場合も、品質が変化している恐れがあり、締付け張力(軸力)は必ずしも保証されないため使用できません。特にトルシア形高力ボルトでは重大な影響が生じることが考えられます。
降雨、降雪などにより、水濡れ状態となったボルトは、トルク係数値が変化して、適正な締付け張力(軸力)が得られない恐れがあり、そのまま使用しないで下さい。
水濡れ後に乾燥した場合も、品質が変化している恐れがあり、締付け張力(軸力)は必ずしも保証されないため使用できません。特にトルシア形高力ボルトでは重大な影響が生じることが考えられます。
摩擦接合では、摩擦面の状態により接合部のすべり耐力に大きな影響を与えます。
黒皮、浮さび、じんあい、油、塗装、溶接スパッタなどが接合部の摩擦面に介在すると、摩擦力が著しく低下するので適切な時期に取除く必要があります。
一方、接合部添接板の外面に塗料などの付着があると、「軸まわり」や座金の「共まわり」が発生し易くなるのでボルトの締付け後に塗装を行って下さい。
トルシア形高力ボルトのピンテールの形状・寸法は、JSSⅡ-09(構造用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット)に規定されています。
一方、電動レンチのインナーソケットの形状・寸法も上記規格に合わせているため通常では締付け時ピンテールがなめることはありません。しかしながら、電動レンチを長期間使用するとインナーソケットの12角内面の山が磨耗するため、締付け時にピンテールの12角山がインナーソケットの12角内面の山に乗り上げる、いわゆるなめり現象が発生します。この場合の処置としては、インナーソケットを新しいものに取り替えて使用すれば防ぐことができます。
また、締付け時インナーソケットが十分に嵌合(かんごう)しなかった場合も、なめりが発生することがありますので注意が必要です。
ピンテールがインナーソケットから抜けない原因は、
(1)インナーソケットが摩耗したため、ピンテールがなめってしまった。
(2)電動レンチのピンテールの排出機構が十分に作動してないためピンテールが飛び出さない。
等が考えられます。
(1)のピンテールがなめった場合、新しいインナーソケットに取り替える必要があります。また、(2)のピンテールが飛び出さない場合、ピンテール突出しピン用バネのヘタリ等が考えられるのでレンチの点検が必要です。
トルシア形高力ボルトの締付けに際し、電動レンチが使用できない理由は、主として締付け箇所が狭いため、電動レンチが入らないことによりますが、その場合トルシア形高力ボルトの代わりに、高力六角ボルトを使用し、(1)トルク法により締付けを行なうか、(2)ナット回転法により締付けを行う2種類の方法があります。(設計編Q19参照
締付け力の点からは一段太径を用いることは、差し支えありませんがボルト孔の拡大が必要になり、これにより母材の断面欠損が増加し、部材耐力が低下しますので、設計者と協議の上、実施しなければなりません。
鉄骨工事技術指針・工事現場施工編によれば、
「締付け部材の寸法上の制約などにより、ナットを締付けることが困難な場合には、ボルトの頭部を回転させることにより、締付けを行うことができる。
この場合の締付け方法は、ナット回転法に準じて1次締めを行ったボルトの頭を120°回転させて本締めを行うこととするが、ボルトの締付けによりナットが共回りしないように、スパナなどでナットの回転を完全に拘束しておくことが必要である。
なお、ボルト頭を回転させて締付けを行う場合には、締付けの回転角を管理する目的とナットに共回りが発生していないことを確認する目的のために、ボルトの頭部側およびナット側のそれぞれにマーキングを行う必要がある。
ボルト頭の回転による締付けは、上に述べたように施工が煩雑で管理に混乱をきたすおそれがあるために、その適用範囲を限定して厳重な管理の下に行う必要がある」とされています。
設定トルクの範囲を超えて締付けた場合、トルクの測定の結果、締めすぎていると判断されたボルトには、何らかの異常が生じているものと考えて不合格とします。
従って、新しいボルトに取り替えて締め直す必要があります。
また、締め忘れ、締付け不足のボルトが発見されたボルト群については、1群のボルト全体についてトルク検査を行うとともに、設定トルクを下回る場合には、所定のトルクまで追締めを行います。
電動インパクトレンチなどを使用して、ナットを回して弛めます。
弛んできてボルト張力(軸力)がなくなると、ボルトの錆や塗装の塗膜がねじ部にかみ込むことでボルトとナットが共まわりを生じる場合がありますが、この時の弛めトルクは小さいので、パイプレンチなどでボルト頭側を押さえてやれば、ナットをはずすことが可能です。
ピンテール12角寸法の基本寸法と許容差は、JSSⅡ-09に次のように定められており、締付け機との嵌合(かんごう)性の関係もあり、ボルトメーカー各社の製品は表4の寸法に統一されています。
電動レンチと比べて減速比の違いと手動によるトルク導入方向も逆方向となる機構のため締付けトルクが入力分だけ小さくなります。
従って、手動式レンチは使用しないで下さい。
一度使用した高カボルトはいずれの締付け方法によった場合も再使用できません。
高力ボルトの締め付けは、高力六角ボルト、トルシア形高力ボルト、溶融亜鉛めっき高力ボルトとも1次締め、マーキングおよび本締めの3段階で締付けることになっています。
1次締めは部材の密着を意図するもので、ボルト呼び径に応じたトルクで行ない、マーキングは締付け後の検査において、ナットの回転量を目視で確認するためのものです。
1次締めトルクは、表5の数値程度(高力六角ボルト、トルシア形高力ボルト、溶融亜鉛めっき高力ボルトを併記した)を目標としますが、呼び径の5倍以上のボルト長さの継手部では、表5に示す値より大きめのトルクで1次締めを行う必要があります。
なお、1次締めトルクをレンチ内部でコントロールされた1次締め専用レンチを使用することを推奨します。
表5 各高力ボルトの1次締めトルク 単位(N・m)
一群のボルトの締付け順序は、図4に示すように接合部の中心から外側へ向かって締付けていきます。
本締めの一群とは、図4の例では上フランジ、下フランジ、ウェブのそれぞれを言います。従って、図4の場合は3群となります。
なお、仮ボルト(図5及び図6)の一群とは異なることに注意が必要です。
図4 本締めボルト締付け順序(JASS6による)
図5 仮ボルト締付けにおける一群の考え方(JASS6による)
図6 エレクションピースの仮ボルト(JASS6による)
再生方法はありません。
製造時の表面状態とは異なっており、新品の時の状態(特にトルク係数値)を保っているとはいえないので、いずれの締付け方法によった場合も使用してはいけません。
また、錆を落としてもトルク係数値に変化があるので使用できません。
トルシア形高力ボルト、高力六角ボルト、溶融亜鉛めっき高力ボルトのいずれにおいても、施工完了の目印であり管理のポイントといえます。
マーキングは必須であり、マーキング無しで締付けられたボルトは取り替えることになります。
① ボルト頭部にクロスひずみゲージを貼り付け、ボルト抜き取り時のひずみから張力(軸力)を推定する方法(ゲージ法)
② 超音波測定による、張力(軸力)測定(長さ方向・ナット直角方向法)
などがあります。
現在のトルシア形高力ボルトでは、0℃までの施工について基準化されていますがそれ以下になる場合、継手部の氷晶、レンチの作動、張力(軸力)のコントロール方法を検討し、施工に望むことが必要です。
溶融亜鉛めっき高力ボルトの締付け方法は、ナット回転法であり、締付け後の検査はナット回転量の確認となり、締付け後のトルク検査の必要はありません。