Q設 11. 摩擦接合の処理と添接板外面の塗装について。
「鋼構造設計規準」や建築基準法施行令第92条の2で与えている高力ボルト摩擦接合面の許容せん断力は、原則としてすべり係数0.45を確保するものとしています。このすべり係数確保の方法として高力ボルト接合設計施工ガイドブックに接合面の処理として下記の3種類について記載されています。
1.自然発錆による場合
摩擦面は孔明け加工後、孔周辺のばりを取り除くとともにグラインダー(ディスクサンダー#24程度)で添接全面の範囲の黒皮を原則として除去した後、屋外に自然放置して発生させた赤錆状態とする。また、摩擦面の確実な接触を期するために、面をへこませないように注意する必要がある。
2.ブラスト処理による場合
摩擦面をショットブラストまたはグリッドブラストにて処理することとし、表面粗さ 50µmRz以上確保することにより、必ずしも赤さびは発生させなくてもよい。
3.薬剤処理の場合
摩擦面処理用の薬剤として①黒皮を除去した後の発錆を促進させるもの、②黒皮のまま塗布して発錆させるものの2タイプある。しかし、②のタイプの薬剤の場合、問題点も多いことよりあまり使用されていない。①のタイプの薬剤の場合、薬剤の役割はあくまでも自然発錆の化学変化を時間的に短縮することであり、黒皮除去の方法や摩擦面の取扱いについての注意事項は、自然発錆の場合と変わらない。
摩擦接合では、摩擦面の状態が接合部のすべり耐力に大きい影響を与えるため黒皮・浮きさび・じんあい・油・塗装・溶接スパッタ・ボルト孔周辺のまくれ・バリ等有害と思われるものは適切な時期に取り除くことが必要です。
一方、添接板外面の塗装は、直接すべり係数に影響を及ぼすことはないが、塗料が摩擦面 に流れ込んで、すべり係数を低下させることがあることや、座金の共まわりやボルトまわりをおこすことがあるため、ボルトの締付け後に塗装を行なうことが望ましいとされています。
近年、工事期間中の部材の発錆防止や完成後の防錆上の見地等から、接合部の摩擦面にも塗装などの表面処理を施すことが土木や建築の一部で行なわれています。
例えば、亜鉛・アルミ合金の溶射や厚膜型無機ジンクリッチペイント塗装などが挙げられますが、いずれの場合も予めすべり試験によって所要のすべり係数を得られることが確認されていることが摩擦面の塗装の前提になっています。